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宅配便の彼はイケメン

著者/白金あろは

イラスト/ひだかなみ

タグ:

身長差

イケメン

社会人

オフィス


あらすじ

広報部の真希は最近、恋に縁がない。オフィスに集荷に訪れる宅配便のイケメン男性はいつも元気で爽やかなのに、真希にはなぜか失礼な態度。からかわれてイライラが募る真希だったが、ある日うっかり怪我をした彼女を真摯に介護する意外な優しさに触れて…。

ちょっとだけ立ち読み

 最近キスをしてない。
 小島真希は会社の昼休み、洗面所で口紅を塗りながらふと思った。この間キスをしたのはいつだったろう。……別にがっつくつもりはないけれど、彼がいないのはやっぱり寂しいな……。合コンとか、行ったほうがいいのかな。
 ちょっとブルーになりながら髪をとかしバレッタでまとめた真希は、午後の仕事に戻るため洗面所を出た。廊下を歩いて所属している広報二課に戻ろうとする。そのとき右手にあるエレベーターの扉が開き、突然青いかたまりが飛び出してきた。ぶつかりそうになった真希は慌てて身体を反らせ、かたまりをやりすごす。
「ビックリしたー」
 思わず呟くと、今にもダッシュしそうな姿勢のまま、そのかたまりが振り向いて言った。
「あ、すみません。見えなかった」
 見えなかった!?
 かたまりはまっすぐ真希に向き直る。宅配便の青い制服を着た男性だ。ということは会社に来る宅配便の人なんだろう。……しかし、デカイ。真希は上を見上げた。あごを四十度くらい上げると、その男の顔が見えた。
「大丈夫? よかった、転ばなくて」
 宅配便男はニッコリ笑うと、再び廊下を走っていった。どうやら急いでいるらしいが……。
 見えないってなんなのよ! いくら私がチビだからって、見えないってことはないでしょう!
 真希の身長は公称百五十センチ。実はあと二センチ低いのだが、見栄を張って百五十と言っている。もっとも健康診断で総務部にはバレているのだが。
 今の男は、真希のカンでは身長百八十を超えている。だけど三十センチくらいの差がなんだというのだ。絶対見えている! 見えないはずがない。
 真希は三十センチ定規を脳裏に思い浮かべた。
 ……けっこう、長かった。
 何よ、小さいと思ってバカにしてさ。
 もっとも、公平に見ればけっこういい男だった。笑ったときに見えた白い歯がキレイで、短めの黒髪は清潔感があったし、目もパッチリしてた、気がする。なにしろ相手の顔が上にあるからよく見えなかったけど。でも、ダメよ。見えないなんて言う失礼な男!
 真希はプリプリしながら部署がある部屋のドアを開け、席に戻ろうとする。ちょうど課長も昼食から戻ったところらしく、机のそばに立ったまま真希のほうを見た。
「小島さん、ちょっと」
「はい」
 呼ばれた真希は、ちょっとドキッとして奥にある課長席のそばに行く。
「悪いんだけどパンフレットができてきたので、全部送ってくれないか。送り先は念のため私が確認する」
「わかりました」
 真希の横に立つ隅田課長は、細身でスラリとした印象だ。フレームレスの眼鏡をかけていて知的な二枚目。紳士的でやさしい。頼りないと言う人もいるが、ちょっとセレブ風な見かけだけですべてを補っていると、真希は思う。最大のポイントは独身ってことだ! どうも奥さんと離婚したらしいが、子どもはいない。もちろん元奥さんの手元にもいないそうだ。このことは同僚の女子社員から聞いた。
 残念な点、ほぼゼロ。女性なら誰だってこういう人とデートしたいと思うだろう。実は真希も、ちょっと思っている。図々しいから口にはしないけれど。
 席につきながら、真希は思った。私があと二十センチ背が高くて体重が二キロ軽くて、胸があと十五センチ大きくてウエストが五センチ細くて脚も細かったら! ついでに目もパッチリしてハーフみたいな顔で……。
 ムリよね。
 夢見ることを中断した真希は、小さくため息をついて仕事に集中することにした。

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