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三年目のイケメン

著者/白金あろは

イラスト/朔ゆうき

タグ:

ヘタレ

イケメン

社会人

仲直り


あらすじ

由佳の彼は人が好すぎて頼りないイケメン。困っている人を放っておけない性格なのはわかるけど、恋人との約束より優先する? すぐにエッチで誤魔化すのも悪い癖。些細な事で喧嘩したあと由佳の姉からお見合いの話が! 相手は安定の公務員。この恋どうなる!?

ちょっとだけ立ち読み

「今日、しない?」
 トモが言った。
「はあッ?」
「DVDもないし、ゴハン食べたらヒマだろ? やろ?」
 セックスはヒマだからやるもんじゃない! と口から出かかったが、ではなんでやるのかというと難しい問題になりそうなので、とりあえず由佳【ゆか】は黙った。それにトモの魂胆は一目瞭然。事態をごまかすためなのだ。
 保川【やすかわ】由佳には、つきあって三年になる恋人がいる。
 Hもしているのだから、恋人といって間違いない、と思う。よく「長すぎる春はよくない」というけれど、三年というのは十分長いんじゃないか。歳も二十七になった。そろそろ結婚を考えてもいい時期だ。
 彼の名前は大木智正【おおきともまさ】、通称トモ。エンジニアをしている二十八歳。顔立ちはけっこう端整で、友人には「イケメンだね!」とうらやましがられる。身体も引き締まってがっしりしてるし、勤務先は大手電機会社。性格だって悪くない……というか、好すぎてバカ。ひっかかっているのはこの点だ。もっともまだプロポーズもされてないけど。
 トモは、由佳が怒るとすぐヘラヘラッと笑い、H方面に持っていこうとする。そうやって煙に巻いて逃げてしまうのだ。ごまかされる自分も悪いのだろうが、不安になるのはこういうときだ。
 こんな男で大丈夫なの?
 趣味は人助けじゃないか、と思うくらいのお人好し。駅前にいる怪しげなセールスに対しても「あなたもノルマがあるんだろうから」とついていこうとする。そのうち絶対、ずるい人や悪い人に騙されて全財産を盗られ、路頭に迷うような気がする。それで目が覚め、資産を取り戻そうと戦うならまだしも、「困ったなー」とヘラヘラ笑っている。そんな未来像が想像されて、イヤなのだ。
「ね? やろ?」
 由佳のアパートのダイニングテーブルに座っているトモは、食事を終えたばかりの皿を片隅に押しやり、顔を近づけてニッコリ笑った。その邪気のない緊張感ゼロの顔を見ていると、怒っていたはずの由佳もつい、まあいっか、と思ってしまう。
 今腹を立てていたのはトモの借金問題だ。といっても、ギャンブルで借金抱えてるとかではなく、人に頼まれてつい貸してしまうほうの、債権焦げつき貸し倒れ問題。今のところ相手は同僚と高校時代の友人らしいから、焦げつくとは限らないのだけど。それにしょせんトモのお金で、私のじゃない。トモも毎月給料が入るのだし、貸すくらいだから貯金もあるのだろう。自分のお金をどうしようとトモの自由で、やかましく言う権利はない。……でもなんか、腹立つんですけど!
 トモが席を立ち、テーブルを回って近づいてきた。
「ユ・カ」
 耳元で名前をささやき、そっと耳たぶを噛む。
「ひゃんっ」
 思わず声が出た。
「まだ片づけがあるのに……」
 テーブルの上にはシチュー皿やスプーン、ワインが残ったグラスがそのままだ。
「あとでオレがやっとくよ」
 トモの手が首すじから耳の後ろをゆっくり撫でていく。それだけでトモに頭を預けたくなってしまうから不思議。
「またごまかそうとして……」
 トモの唇が額に下りてきた。チュッと音を立てて繰り返すキスが鼻から頬へと移り、やがて唇に到達する。何度もついばむように触れてくるキスに由佳のほうが我慢できなくなって、トモのちょっと荒れた唇を吸ってしまう。そのまま歯列の間に舌を差し入れると、尖った熱いトモの舌が応えるように絡んできた。

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