anopanya1

あのパン屋さんにはイケメンがいる!

著者/白金あろは

イラスト/朔ゆうき

タグ:

恋愛

残業

同僚

年下

職人

パン屋

年下攻め


あらすじ

二十歳って私より五つも年下なの!? ベーカリーで働き始めた有希は、パン職人を目指す貴広と出会う。閉店後にクロワッサンを試食しながらバター風味のキス。毎日パンをこねる貴広のたくましい腕に抱きしめられ、有希は自分の体が反応していることに気づく…。

ちょっとだけ立ち読み

 あのパン屋さんにはイケメンがいる!
 有希にそう教えてくれたのは友だちのケイコだった。
「評判だよ、奥でパン焼いてるの。もったいないよね〜! あの人がパン売ったら店はもっと儲かるのに!」
 有希もイケメンは嫌いじゃない。でも、なんで奥で働いてる人の顔までみんな知ってるのだろう? あの店——『フク・ベーカリー』は駅前にある街のパン屋さんで、わりと美味しいパンを売っている。有希もときどき買っているが、パン職人の顔まで確認したことはない。その『フク・ベーカリー』で有希は明日から働くことになっていた。販売スタッフ募集の貼り紙を見て応募したらすんなり採用されたのだ。そのことを報告するため、有希は駅ビルの中にあるカフェでケイコと会っていた。
 カフェモカを飲みながら、ケイコは有希をじっと見た。
「あんた、彼氏いない歴何年? もういいかげんオトコ作んなさいよ」
「えっ? なんでいきなり…」
「そのイケメンを捕まえんの! あんたもとは悪くないんだからさ。胸だってあるし」
 有希は思わず自分の胸に手を当てた。七十五センチEカップ。確かに大きいほうではあるが……。
「オトコに揉んでもらうのが巨乳への第一歩。あんたは揉んでもらってないのに大きいんだからズルイよ」
 よくわからないことを言ったケイコは、突然ニヤー…ッと眼をカマボコ型にした。
「アタシ聞いたことあるんだけどさ、パンをこねるときって、おっぱいを揉むような感じでやるといいらしいよ」
「ええっ? まさかー」
「だから、そのパン職人に揉んでもらえばいいじゃん。きっとうまいよ! 新しい職場は出会いのチャンスでしょ!」
 有希はフルフルと首を横に振った。別にこれ以上胸が大きくなりたいとは思わない。というか、オトコを探すために仕事に行くんじゃないし。第一、そんなイケメンが自分のような平凡な女の子を相手にするわけがない。きっと美人の彼女がいるに決まってるのだ。白馬に乗った王子様はお姫様の前にしか現れない。
 しかしケイコは有希に指を突きつけた。
「まさか、パンが好きで食べたいからパン屋に就職したとか言わないよね? オトコ! オトコを喰うために就職するんだよ!」
「そんなあ〜」


 村瀬有希は子どもの頃からパンが好きだった。メロンパンやデニッシュパン、カレーパンに焼きそばパン。焼き立てのパンの匂いをかぐとそれだけで幸せな気分になれる。どうせならパンに囲まれていたいと思い『フク・ベーカリー』で働くことにしたのだ。オトコを喰うためでは絶対ない……。
 翌日の初出勤。朝八時の開店前に、有希は制服のエプロンを着けて店に立ち、スタッフと顔を合わせた。店はパンを売るだけで、イートインスペースなどはないので、こぢんまりしている。スタッフもパンを焼く職人と販売員が、自分を含め各二名いるだけだった。パン職人のうちひとりは五十代の小太りの男性で、オーナーだった。もうひとりが間違いなく噂のイケメンだとわかる、小林貴広。貴広はスラリと背が高く髪は黒い短髪で、清潔感がある。切れ長の黒い瞳が印象的で、口を引き結んでいるとやや冷たい印象を与えるが、芸能人だと言われたら信じてしまうくらい整った顔立ちだった。しかも顔が小さい。年齢は不明だが、二十五歳になる有希よりは若そうだった。白のコックコートがよく似合ってまぶしいほどだ。
 オーナーが有希を全員に紹介してくれ、有希は「よろしくお願いします!」と頭を下げたが、貴広は軽く頷いたような挨拶を返しただけだった。
 販売スタッフの先輩はおばさんで、有希は彼女について仕事を学ぶことになった。勤務は交替制だ。
「パン屋さんはけっこう大変だけど、ひとつひとつ覚えていけば大丈夫だから。わからないことはなんでも聞いてね」
 経験のない有希を励ますように、先輩が笑顔をくれる。
「はい! 頑張ります!」
「さあ開店だ。美味しいパンをお客様に。今日もお願いします!」
 オーナーの声と同時に店が開いた。

 ベーカリーが一番忙しいのは昼の時間帯だった。近隣の会社に勤める会社員がサンドイッチを買いに来たり、近所に住む人々が昼食用のパンを買い求めにやってくる。それに合わせてオーナーと貴広は次々にパンを焼く。出来立てのパンが棚に並び、有希も必死でレジを打った。バゲット、食パン、惣菜パン…。売る立場になってみるとパンの種類の多さにビックリする。それをひとつひとつ薄い紙でくるみ、さらに店の袋に入れる。それだけでも大変な作業だ。
「七百五十円になります。はい、千円お預かりします。二百五十円のお返しです。ありがとうございました!」
 ひとつひとつは難しい作業ではないが、ひたすら続けていると頭がボウッとしてくる。
「お疲れさま。一区切りついたから奥で休憩して」
 先輩に言われてふと店内の時計を見ると、すでに二時近い。有希はハアッと息をついた。先輩の言葉に甘えて、レジの右横にあるドアを開けて奥に下がる。店の奥ではパンを焼いているが、区切った一角にテーブルとイスが置いてあってそこで休めるようになっていた。
 テーブルに座って昼食用に持ってきた弁当を広げると、貴広が立ち働いている姿が目に入った。台の上でパンをこねているようだ。
 ――パンをこねるときって、おっぱいを揉むような感じでやるといいらしいよ。
 昨日のケイコの言葉が脳裏に蘇よみがえった。白い生地が丸まり、また伸びていく。すると貴広の手が親指と人さし指で輪を作り、そこから生地がぐにゅ、と出てきた。一瞬、男性の手に揉まれる乳房と乳首が見えたような気がする。

開く/閉じる

トップへ戻る